研究内容

 本研究室では、植物における分子生物学的手法と共に、ゲノム情報や遺伝子組換え技術、バイオイメージングなどの手法も用い、植物と微生物の相互作用に注目した研究を行っています。特に、独自の実験系やツールを活用し、植物免疫や微生物との共生に関して先駆的な知見を得るべく、現在は以下の3つの研究テーマに取り組んでいます。

 研究対象の植物は、それぞれの研究内容に応じて、野生植物から草本植物(ラン、シロイヌナズナ、ミヤコグサ、トマトなど)までと多岐に渡っています。また同時に病原菌や共生菌に関する研究も行っています。研究を精力的に進めるために、学内外、国内外問わず、多くの研究者と積極的に共同研究を行っています。応用研究では、多くの企業と共同研究を進めています。

1. キチン認識を介した植物による糸状菌識別、免疫誘導および生長促進

 天然の多糖であるキチンは糸状菌(カビ)の細胞壁の主成分であり、植物による糸状菌の認識に関与していることが明らかになってます。またキチンを処理した植物では、病害抵抗性(免疫)の誘導と生長の促進が認められることから、有益糸状菌による同様の効果がキチン認識を介して発現していると予想されます。これらを踏まえ、キチンおよび有益糸状菌による植物の免疫誘導と生長促進、およびキチン認識を介した糸状菌識別のメカニズムを分子レベルで解明するべく研究に取り組んでいます。

  • キチンによる植物の生長促進と免疫誘導の発現機構
  • 植物による有益糸状菌の認識機構
  • 有益糸状菌感染により植物で誘導される生長促進と免疫の発現機構

2. ラン科植物における菌従属栄養性の菌根共生の制御機構

 植物は光合成により炭素源(糖)を合成し、それを用いてエネルギーをつくって生きることが可能な、唯一の独立栄養生物です。しかしながら、植物の中には共生糸状菌である菌根菌との関係を利用して、菌根菌から炭素源を奪って生きる菌従属栄養植物が分類群を問わず進化の過程で出現しています。ラン科植物は、種子発芽後の生育初期に菌従属栄養性を有する特異な菌根共生系を進化の過程で獲得してきたことで知られています。そこで我々は、菌従属栄養性に関わる菌根共生の制御機構やその進化について分子レベルで解明すべく、様々なラン科植物を対象とした研究を行っています。

  • ラン科植物における菌根共生の制御メカニズムと進化
  • ラン科植物の菌従属栄養性獲得の遺伝子基盤

3. アーバスキュラー菌根共生の制御機構と進化

 陸上植物の7割以上と共生するアーバスキュラー菌根菌は、共生により土壌中のリンや窒素を植物に与える代わりに光合成産物を受け取っています。また、相手となる植物の分類群によって根の中で異なる形態をとることが知られています。菌従属栄養植物が出現する分類群ではその形態の一つであるパリス型を形成することから、菌従属栄養植物への進化にパリス型の形成が関与すると考えられています。しかしパリス型を形成する植物のアーバスキュラー菌根菌との共生に関する知見は乏しいです。そこで、ナス科のトマトやリンドウ科のトルコギキョウを用いて菌根共生の制御機構を分子レベルで解明することを試みるとともに、リンドウ科の野生植物を用いて菌従属栄養性の獲得と進化に関する研究も実施しています。

  • アーバスキュラー菌根共生の制御機構と進化
  • リンドウ科植物の菌従属栄養性獲得と進化

鳥取大学農学部
植物分子生物学分野

〒680-8553 鳥取県鳥取市湖山町南4丁目101

Laboratory of Plant Molecular Biology

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